伝承芸能
私たちの住んでいる金石には、古くから「宮の腰」と呼ばれ港町として栄えてきました。港町ゆえに信仰も厚く祭りも盛んでした。
祭礼の余興や行事が今に伝わってきた伝承芸能は、8月第1日曜日を含む金・土・日の大野湊神社の夏祭りに見ることができます。
悪魔払い
今からおよそ三百年前の江戸時代、元禄年間に金沢の方々で悪魔払いが大流行した。当時悪魔払いは弥彦送りとか、または弥彦払いと呼ばれていたが、この弥彦払いが訛って「やひこばば」となった。
悪魔払いは、家に病人が出たり、不幸があったりすると山伏に頼んで厄払いの祈祷をしてもらった。経文を唱え、錫杖を打ち振って歩く者。踊り手は、白布で頭を包み、柿色の法被にたっつけ袴をはき、一人は背に笈を背負って般若の面を入れ、一人は悪尉の面を入れ、付き人の者たちは、弓、鉞を持って歩く者、唐櫃をかつぐ者もいる。高足駄を履き、ホラ貝を吹き、太鼓をたたいて行進した。この悪魔払いは、幕末には影をひそめてしまい、祭礼の余興として今に伝わってきた。
米上げ
漁業関係の人達が、神様に新米を献納する行事で、江戸時代より伝わっているといわれている。
梯子型に組んだ丸太の上に、竹笹と米俵を積み上げ、音頭をとる人が紐一本の手綱を握って乗り「祭り音頭」や「木遣り」を唄う。かつぐのは、威勢のよい若衆で「囃子」を唄い、練り歩きながら進む。以前は漁師の人達や漁業関係の人達のみで行われていたが、現在は「金石町米上げ保存会」の人達によって受け継がれている。
獅子舞
大野湊神社の夏まつりには、欠かせない風物のひとつに獅子舞がある。
藩政時代に庶民が武芸を隠れて行ったのが獅子舞の起源とも伝えられており、金石では「出雲屋某」という人が兵庫方面より伝えたといわれている。それが次第に近在に広まり、出雲流と呼ばれるようになった。その後、いろいろの流儀が取り入れられて、大島流として今に伝承されているといわれている。現在は通町の人達によって受け継がれている。
奴行列
夏まつりの催物のひとつ、奴行列は金石御船町の子供達で編成されている。
行列は、神輿の先導をする形で進行する。裃、陣笠をつけた先払いが歩きそのあとを後ろ向きになって「大奴」が進む。大奴は大人がつとめて音頭をとる。祭礼の期間中は、各町会を巡り所々で止まって、輪になって「手踊り」をする。金石に伝わってきたのは戦後のことで、五郎島より習ってきたといわれている。